国立長寿医療センターアルツハイマー病研究部
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研究内容
 
       
発症機序解析研究室
室長:内村健治、研究員:細野友美、研究生;新見しおり
研究課題
(i) 細胞の血行性脳実質内ホーミングの分子機序の解明およびそのアルツハイマー病の治療への応用
(ii) 脳内におけるアルツハイマー病など神経変性疾患発症に伴う糖鎖生物機能の解析
研究の概要
 本研究室は現室長内村健治が2006年10月に着任し新たにスタートした研究室である。着任後本研究室で確立した生体内ビデオ蛍光顕微鏡法および免疫学的手法を用いアルツハイマー病の発症機序を解析し治療技術を開発することを目的としている。また、日本における発展が著しい"糖鎖"研究を切り口としてアルツハイマー病などの神経変性疾患の発症機序を理解することも目指している。

 (i)白血球などの血液および骨髄液由来細胞が血行性に末梢組織へ移入する場合、多段階の分子シグナルによって厳密に制御されていることが知られている。 白血球の一種であるナイーブリンパ球は常にリンパ節や脾臓といった二次リンパ組織へ血行性に動員されこの現象は"ホーミング"現象として知られている。一方、Tリンパ球のなかには皮膚へホーミングまたは腸管へホーミングを示すものも存在する。細胞表面糖鎖-セレクチン、ケモカイン-ケモカイン受容体、インテグリン-接着分子の種類および組み合わせの違いにより血管外遊走細胞およびターゲットとなる組織に多様性を与えている。各末梢組織へのホーミングの機序は最近になって明らかになってきたが、例外的に脳に代表される中 枢神経組織への血行性細胞移入の分子メカニズムについては未だ不明である。 現室長はある種の糖鎖硫酸基転移酵素が実際に生体内でリンパ球のリンパ節へのホーミングに関わることをその酵素遺伝子欠損マウスの作製および解析により明らかにした(Uchimura et al, J Biol Chem 2002, 2004)。さらに、組織への血行性細胞動員をフローサイトメーターを用いて測定する方法(ホーミン グアッセイ)および生体内ビデオ蛍光顕微鏡法を用い、内皮細胞表面糖鎖の硫酸基修飾がリンパ球の血液中における速度の減少に必須であるという生物機能を証明した(Uchimura et al, Nature Immunol 2005)。詳しくは総説を参照(Uchimura & Rosen, Trends Immunol 2006)。また、カナダおよび米国との共 同研究により全く新しいホーミング分子機序を発見した(Veerman et al, Nature Immunol 2007)。

これら研究成果を踏まえ血液中を速い速度で流れる細胞を脳血管内で接着、血管外遊走させることを可能にする分子メカニズムを解明し細胞を血行性に脳実質内へ動員する技術を開発する研究テーマの着想に至った。世界的に急務となっているアルツハイマー病や多発性硬化症などの神経変性疾患において、薬剤や変性物質の除去を亢進させる細胞や分子を脳実質の損傷を伴わずに血行性に脳内へ送り込むという新しい治療法の開発が期待される。

 (ii) アルツハイマー病などの神経変性疾患において、その脳内における細胞成長因子、サイトカインおよびケモカインといったタンパク質が脳内の細胞に働きその増殖や生物機能に強く影響を与えることが知られている。細胞表面のへパラン硫酸糖鎖がこれらタンパク質に結合し、細胞への働きを制御している可能性が強く示唆されている。現室長はこの結合を制御していると思われる細胞外スルファターゼSulf-1およびSulf-2の遺伝子クローニングおよび酵素活性解析に従事し(Morimoto-Tomita*, Uchimura* et al, J Biol Chem 2002, *equal cont.)、さらに細胞成長因子やケモカインなどのへパラン硫酸糖鎖との分子結合を細胞外スルファターゼが調節していることを明らかにした(Uchimura et al, BMC Biochem 2006; Uchimura et al, Methods Enzymol 2006)。これら研究成果を踏まえ、この新規細胞外スルファターゼがアルツハイマー病などの神経変性疾患の脳で生物機能を調節できる可能性を探ることを研究課題の一つとして提案する。

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